今回は、プロセス管理の事例紹介(その1)です。
最初は印刷会社です。
印刷営業の特徴で、他の業種の営業と同様のことがあります。
もし業務用消耗品を取り扱っているとすれば、ある一定の消費期間を過ぎるとお客様の在庫がゼロになります。
例えば、社用封筒の場合で考えてみましょう。
今回の納品数が500枚だとしたら、これはどのくらいで消費されるでしょうか。
営業社員は分かりませんが、発注側のお客様には予測がつきます。
発注した会社にとって、一番困るのは在庫がゼロになるときです。
郵便が出せなくなるからです。
在庫ゼロという緊急事態になると、今までの印刷会社を優先というより、納期優先になります。
突然、明日までに封筒が欲しいと言われても、版下があっても対応ができない場合があります。
ある印刷会社では、それによって競争会社に何社もお客様を取られてきたのでした。
そこで、その会社では、営業社員5人の営業活動を分析しました。
そうすると、次のことが分かりました。
高い業績を上げている営業社員は、商品を納品する時に 「次のご注文はいつ頃になりますか」 と聞いているのです。
お客様も 「だいたい、来年2月ごろかなぁ」 と答えてくれます。
そこで、営業社員が 「それでは来年の1月頃にお電話させて頂きます」 と応えるのです。
お客様からは 「頼むよ」 と言ってもらえます。
この営業方法を取っているので、既存顧客を失うことはほとんどありません。
お客様から 「非常に対応が良い」 と評判なのです。
お客様から次回の発注の予定日を聞いてくること。
これが、この会社の営業社員のコンピテンシーとなりました。
これをプロセス管理することにしたのです。
プロセス指標は、「次回の発注予定日」 と 「ヒアリング件数」です。
商品の種類(封筒、名刺、社用箋、伝票etc..)ごとに、次回の発注予定日を聞いてきた回数です。
目標数は、納品件数となりました。
この件数は毎日明確になっています。
壁に毎日の納品件数とヒアリング件数を記入するようにしました。
その結果、「やったー」 「おめでとう」 の連発です。
なかなか、次回の発注予定日を聞けなかった社員も、上手な聞き方を教えてもらってヒアリング件数が急伸しました。
その本人も自信がついた様子が見えます。
職場は活気がみなぎってきました。
ただし、業績は向上していません。
何故、と思われるでしょうね。
実際に次の注文が発生するまでは、業績が大幅に向上することはないのです。
でも、その時は確実に受注は獲得できます。
また、売上の予測が立てられることもメリットです。
製造部も大まかな段取りが組めるようになり、大喜びです。
その頃には、急ぎの仕事が減るでしょう。
今までは既存顧客のところへ行って、「何か注文をもらって来い」 と指導してきましたが、その必要はなくなりました。
印刷物にはそのタイミングがあるのです。
その分、営業社員は新規開拓活動へ時間を割くことが出来るようになりました。
もちろん新規開拓でもプロセス管理を実行しています。
次号は、プロセス管理の事例紹介(その2)です。
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新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩