それでは、ハーズバーグの分析結果を見てみましょう。
これは社長を除く、全ての社員が対象者です。
幹部、管理者も例外はありません。
まずは 【満足要因】 からです。
1.達成
何か仕事をやったときの達成感です。
「やったー」 という感情があると、最も満足感が得られることを意味しています。
これが最も社員をやる気にさせることのできる要因です。
この達成感を仕事をする上で、どのくらい社員に持ってもらえるかの工夫が必要です。
現在の日本中の目標管理制度は、この理論の逆を行っているように思えます。
社員本人がとても達成は不可能と思ったまま目標を設定します。
もし、1年間達成感を味わうことがなかったら、その社員は自分の仕事の中で満足感を味わえなかったのです。
これは組織的に見ても大きな損失です。
こうならないために、「プロセス管理」 ⇒( プロセス管理で業績を向上させる 1/3、 2/3、 3/3、掲載中 ) を実施しなければならないのです。
これにより、社員は毎月のように達成感を味わうことが可能になります。
2.承認
これは、上司が部下を 「認める」 ことです。
「達成」 は社員本人でも確認できますが、これに上司の 「承認」 が加わると最高の満足感が得られます。
「やくやったね。おめでとう」 ということが承認です。
このとき上司に必要なことは、業績結果が良かったことだけを認めるのではなく、その結果を出したプロセスを褒めることです。
「私の上司は、きちんと私の苦労して頑張ってきたことを見てくれている」 と思えることは、部下にとっては最高のご褒美です。
その上司に、また認めてもらいたいと考えるのは人間として当然のことなのです。
3.仕事そのもの
好きな仕事をすることができる社員は幸せです。
他者から大変そうに見える仕事も嬉々としてこなしています。
食事をするのも忘れて仕事をしていた、という話を聞くことがありますが、その仕事そのものが好きなのです。
だからこそ、成長も飛躍的に早いのです。
考えてみれば、それが社員にとって最高の幸せかもしれません。
好きな仕事をしている社員は楽しそうです。
だから、仕事を楽しくやれる工夫は必要でしょう。
年がら年中、苦しそうな顔をして仕事をしていたのでは、アイディアも創造性もチャレンジ意欲も出ないと思うのは、私1人ではないでしょう。
4.責任
この 「責任」 というのが、そんなに満足感もたらすのかと驚かれるかもしれません。
「もっと責任感を持て」 と上司が部下を指導する場面に出合います。
でもそれは、責任感を持てと言う前に、本人に責任感を持たせる工夫が必要でしょう。
中小企業においては、社員一人ひとりが大切な戦力です。
その社員に責任感を持たせる仕事のさせ方を考えねばなりません。
「あなたの仕事は、この部署の中ではとても重要です」
「あなたの仕事によって、会社全体が動き出します」
この一言は、社員に自然発生的に責任感を生み出します。
そして、それはその社員にとって自己重要性を見い出し、満足要因となるのです。
注目すべき点は、この責任の満足の持続性が最も高いことです。
5.昇進
この昇進は、日本でも満足要因であることに疑いはないでしょう。
より責任度合の高い仕事に挑戦することになります。
今までは、自分の成果を上げれば良かったのですが、今後は任された部署全体の成果を上げることが要求されます。
数値責任も明確にされることになります。
それを承知の上で、その役職を引き受けるのです。
この昇進について感じていることがあります。
企業規模が大きくなれば実施していること、それは 「辞令」 です。
中小企業の場合は、言葉ひとつだけの場合が多いようです。
簡単でもいいですから、ぜひ書面で辞令を発令して欲しいと思っています。
その辞令一枚で、昇進する社員を取り囲む環境が一変します。
家族がその最たるものです。
例えば、辞令を家に持って帰って 「今度、課長に任命された」 という場面を作って欲しいのです。
親父が誇らしげに見える瞬間がそこにあるからです。
家族に向かって 「俺は頑張っている」 と口で言うのは意外と恥ずかしくて言えないものです。
そして、【不満足要因】 です。
ここに 「給与」 が入っています。
この不満足要因とは、その要因によって不満足な状態になることはあるが、その不満足が解消されたからといって、満足することにはならないのです。
「給与」 で説明すると次のようになります。
現在の給与には、不満足です。
しかし、満足できる給与が支給されることになったとしても、満足要因とはならないのです。
「不満足」 が解消されたというだけなのです。
もっとも、「達成」 や 「承認」 ほどではありませんが、「給与」 で満足感を得ることは可能です。
でも、その度合は本当に少ないのです。
このことを社長や幹部の人たちには十分理解してもらいたいと思っています。
「賃金をもっと出すからもっと成果を出せ」 の効果は思いのほか、小さいことを知らねばなりません。
これを知らない人たちが言っている言葉が 「成果を出した人にもっと賃金を出す」 という制度です。
つまり、成果主義賃金制度なのです。
これによる失敗が増える一方ですから、最近は 「成果主義賃金」 を口にする経営者は少なくなりました。
繰り返しになりますが、今も昔も、日本も外国でも社員の動機づけは 「給与」 ではなく、「達成」 であり、「承認」 であることを覚えておいてほしいと思います。
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新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩