目標管理を導入した初年度では社員が高い目標を設定するにもかかわらず、
2年目では高い目標を設定しないようになります。
それには3つの問題があります。
今回は、そのうち3つ目の問題について考えてみます。
【問題その3】
目標を達成する具体的な方法がわからない
今後の1年間の目標を設定するときに、どうやれば、その目標が実現できるのか。
その達成方法を知っている社員と、
そうでない社員では、その目標設定の考え方に違いが出ます。
それは、すべての場合、
今までの自分の仕事の仕方をどのように変えれば良いかということになります。
すべての過去の実績は、自分の仕事の仕方の改善によって積み重ねてきました。
そのことを本人が、気がついているかどうかは別ですが…。
社内の社員の実績の差は、このことで説明がつきます。
ほとんどが 「やっていること」 の差です。
〇実績50を実現するために 「やっていること」
〇実績75を実現するために 「やっていること」
〇実績100を実現するために 「やっていること」
この 「やっていること」 の差が、実績の差です。
そうであれば、
御社のトップの実績を上げている社員の仕事の仕方、
つまり、「やっていること」 が解明できて、
それを実施することができたら、
実績も同じ結果になるのです。
例外はありません。
ところが、トップの実績を上げている社員が、
何をしているのかを明らかにしている会社は少ないのです。
すべて社員の胸の内に個別の財産として眠っているのです。
それを会社全体の共有財産としなければなりません。
そうすれば、いくらでも高い目標が設定できます。
なぜなら、そのために何をすべきかが事前に分かっているからです。
自分の今までの仕事は、
現在の実績を上げるためには確かに素晴らしかったでしょう。
しかし、前回と同じ時間を働き、更なる実績を上げるためには、
自分の目標の高さに合わせた仕事の改善をしなければなりません。
高い目標を達成するための具体的な方法が、
会社の中で明らかになっているか否かは、目標設定に大きな違いを生みます。
蛇足ですが、ちょっと経営者の知らない世界のお話をします。
ある会社では、経営目標を各部門・部署へ割り振っていました。
社長から各部長へ。
そして部署の責任者へ。
その会社の営業所長へは、
営業部長がその営業目標の提示をしていました。
営業部長
「君の所は、来期は15億円位でどうだ。
前年対比105%位だが、君なら可能な目標だと思うよ」
営業所長
「ちょっと待ってください。 今期の伸びは大型の案件が3件も受注できたので、
高い実績を残せそうですが、来期もそのような案件があるかどうかは分かりません」
営業部長
「まあ、運も実力のうち。 来期もその運を引き込めば、難しくはないよ」
営業所長
「運? 難しくない?」
営業部長
「社長も君のことは買っているよ。 その期待に応える数字としても良い線だよ」
営業所長
「少し考えさせてください」
営業部長
「いいよ。 でも、結論は変わらないからね」
営業部長と営業所長の会議は、わずか15分程度で終了しました。
その後が問題でした。
どうも、この目標は変更不能と悟った営業所長は、
その日の夕方、営業社員を集めました。
そして、営業部長から提示された来期の営業目標を営業社員に説明しました。
それも、営業部長との話の内容の詳しいやり取りも含めてです。
営業社員
「所長、今期の営業所の約1.5億円近い受注は、どう考えても 『たまたま』 の受
注です。 その数字をベースにしての来期の目標設定は無理です。 少なくとも、
私の目標は、その分を割り引いて目標設定させてください」
営業所長
「それはできないよ」
営業社員
「所長、私の顧客のA社は、今期、本社を移転しました。 来期はその分を引いて
基礎ベースを計算してください。 今期の実績をそっくり基礎ベースにされたら、
最初から不可能な目標になります」
営業所長
「そりゃ、変更は無理だ」
社員はそれぞれ個別の事情を抱えています。
その事情ひとつ一つに対応していたら、営業所全体の目標の割り振りはできません。
そこで、その営業所長は断言しました。
営業所長
「とにかく、営業所全体の目標は決まっている。 私が皆さんの
今年の実績をよく見て、来期の目標を決める。 所長一任だ」
営業社員
「それじゃ、社長が社内報で言っていた目標設定についての話と違いますよ」
営業所長
「理想と現実は違うんだよ」
営業社員
「それじゃ、目標じゃないでしょう」
営業所長
「いや、それが目標だ」
これでは、この営業所の社員は、自分の達成すべき目標とは考えませんよね。
その後のある営業社員の一言がすべてを物語っています。
営業社員
「もし、目標が達成できなかったとしても、それは自分の責任じゃないよな」
こうやって、目標が未達成でも、危機感を持たない社員を作っていくことになるのです。
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近藤経営労務事務所
社会保険労務士・人事コンサルタント 近藤 昌浩