今回は、その4回目です。
それでは賃金制度をどのようにつくり運用すれば良いか、その基本を説明していきましょう。
まずは、オープンにすることです。
もともと、就業規則の中の賃金規程については法律上、絶対的必要記載事項となっています。
社内にオープンにしなければならない義務があります。
ところが、社員へ告知していない会社が多いのです。
せっかく賃金規程があるにもかかわらず、オープンにしていない会社の社長に尋ねると、「賃金制度が出来たときには発表したのですが、いろいろ問題が発生して、現在は公にしていないのです」 という話を聞くことがあります。
これは、賃金制度を 「仕組み」 と考えていないのです。
仕組みは一度つくったら終わりではなく、全てのスタートです。
スタートしたら、問題は必ず100%発生します。
その問題を解決しながら、その仕組みを見直すのです。
そして、またオープンにするのです。
人事の仕組みは、すべて人を成長させる目的でつくられます。
その目的に照らし合わせてどんどん改訂するのです。
何のためらいもいりません。
これが出来ないから、管理者すら賃金制度についての説明ができないのです。
「最近の社員は賃金を自ら獲得しようという意欲がない」 と嘆く前によく考えて欲しいと思います。
どうやったら賃金を増やせるか分からないのに、本当に意欲が出るでしょうか。
現在の社員の 「問題」 と思える状態は結果であり、その意識は変えられます。
では、どの位オープンにされるのが良いのでしょうか。
一番良いのは、一人ひとりの社員がどのような評価を受けたら、○○円昇給するというレベルです。
つまり、例えば5等級の社員が成長評価の点数で80点取ったら、昇給額が2号俸上がって成長給が8,000円昇給するということです。
【例】 〈5等級の社員の場合〉
S評価…90点以上 ⇒ 3号俸昇給 12,000円
A評価…80点以上 ⇒ 2号俸昇給 8,000円
B評価…60点以上 ⇒ 1号俸昇給 4,000円
C評価…40点以上 ⇒ 昇給なし 0円
D評価…40点未満 ⇒ 1号俸ダウン −4,000円
と事前に発表するのです。
全社的に業績向上させようということは、S評価の社員を増やすということと同じことです。
S評価の社員が増えても、全体の業績が向上していなければ、成長シートに問題があります。
期待成果のウエートが低い可能性が考えられます。
さて、ここまでオープンにして、社長が一言 「全員S評価を目指して頑張ろう。高い昇給額を目指して欲しい」 とやったらどうでしょう。
賃金獲得に向けて、意欲的にならないでしょうか。
これが仕組みです。
もう既に部下は動機づいているから、管理者だって指導しやすくなります。
管理者に社員の動機づけを指示するとその結果にばらつきが出ますが、これならバラツキは少なくなります。
マネジメントに関する書籍の多くは、いかに社員のやる気を出させるかということをテーマにしています。
そして、それを管理者の能力と見ています。
現実として、この能力の差がマネジメントの差であることは間違いありません。
これが難しいのです。
だから、組織全体の業績向上が実現しづらいと言えます。
社長がこの悩みをこれからも続けるか。
それとも仕組みを作ってしまうか。
その結論は言うまでもないでしょう。
次号に続きます。
「人事制度の仕組みづくり」 で業績向上の支援をいたします。
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新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩