採用の失敗に気づいたら、どうする?
採用の失敗に気づいたら、どうする?


従業員の採用にあたり、応募者が我が社の従業員として相応しいかどうか、面接で人物を見極めることはなかなか難しいものです。

従業員を新たに採用したが、「勤務成績が悪い、協調性がない、業務能力がない」 など、さまざまな理由で解雇したい…との相談を受けることが多々あります。

このようなケースに対応するため、会社が理解しておくべきことがあります。

労働基準法では、従業員を採用する場合に試用期間を認めています。
試用期間とは、従業員を本採用する前に3ヵ月や6ヵ月など、試験的に使用する期間のことです。

この試用期間中に、仕事に対する適性や勤務態度などを観察して、本採用するかどうかを判断し、決定することになります。

会社には試用期間中の従業員に対して、本採用を拒否する条件がかなり与えられています。

労働基準法では試用期間のあり方について規定していません。
よって、就業規則や労働契約書で、会社の実情に合うように試用期間中の労働条件を明確に規定することが重要です。
(就業規則や労働契約書についてのご相談はお気軽に連絡ください。)

試用期間中の従業員を本採用しない場合は、労働契約を打ち切ることになるので労働基準法上では解雇になります。

一般的に本採用を拒否する理由は、冒頭に述べた 「勤務成績が悪い、協調性がない、業務能力がない」 などが挙げられます。

正規従業員を解雇する場合には、このような理由は合理的な解雇事由として簡単には認められません。
しかし、試用期間中の従業員に対しては本採用拒否の理由として、ほとんどの場合に成り立ちます。

ようするに、正規従業員に比べると、試用期間中の従業員は解雇できる条件が、かなり緩やかになるということです。

試用期間中の従業員の取り扱いについて、会話形式でもっと分かりやすく解説しましょう。

 


 

先生、こんにちは。
弊社にも4月1日に新入社員が2人入社しました。


そうですか。
今後、御社を背負って立つ優秀な人材に成長してくれると祈りたいですね。

この時季になると着慣れないスーツに身を包んだ新入社員の姿をよく見かけますが、何だか自分が社会人としてスタートした頃のことを思い出して、いつも爽やかな気持ちになりますよ。


そうですね。 
今回の二人の新入社員には、ゆっくりでも確実に会社に必要とされる人材に育ってもらいたいものです。

---木戸部長が新入社員について話をしていると、坂本社長が会議室に現れた。---


先生、こんにちは。
なんだか盛り上がっているようですね。


お世話になっております。
いま木戸部長から4月1日に入社した新入社員のお話をお聞きしていたんですよ。


そうだったんですか。
今年の新入社員の二人は非常に真面目ですし、私も期待しています。
そういえば新入社員で思い出したのですが、先生にお聞きしたいことがありました。

弊社では就業規則で入社の際、3ヶ月間の試用期間を設けているのですが、そもそもこの試用期間にはどのような意味があるのかご教授頂けますでしょうか?


はい、わかりました。 ご説明致します。
従業員の採用というのは本当に難しいもので、いくら面接でしっかり見極めたとしても、最終的には実際に働いてもらわなければ、その能力や適性を見抜くことはできないというのが実態ではないかと思います。

そこで試用期間を設けて、現実に就業させながら業務への適性を判断するのです。
しかし、試用期間中も労働契約が締結された期間であることについては本採用と変わりません。


本採用と変わらないということは、もし試用期間の途中もしくは満了時に辞めてもらおうとすると、本採用の社員と同様に解雇の問題が起こり得るということなのでしょうか?
それでは、あまり試用期間の意味がないように思うのですが。


原則としてはそのとおりですが、判例(最大判昭和48年12月12日 三菱樹脂事件、東京地判平成13年12月25日 ブレーンベース事件)において、試用期間は解約権が留保された労働契約であるとされています。

つまり、実際の適性を確認する合理的な期間であれば、採用決定後の調査によって判明した事情を理由として本採用を拒否することは許され、また通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められるとされているのです。


つまり、試用期間中の従業員の本採用拒否は、通常の解雇の場合よりも使用者の裁量が広く認められると言うことですか?


そのとおりです。
また試用期間における解雇に関しては、解雇予告制度についても例外が設けられています。

通常、労働者を解雇する場合には30日前に予告するか、平均賃金の30日分にあたる解雇予告手当の支払いが必要とされています。
しかし試用期間の場合は、入社から14日間以内であれば解雇予告は必要とされません。


なるほど、それは大きいですね。


そうですね。
よって従業員を採用した際にはまずは14日以内にその本採用の可否を判断すべきでしょう。

また試用期間の長さをどの程度に設定すればよいかという問題ですが、この点については特に法律上の定めはありません。
よって各企業において、個別に定めることになります。


今回入社した二人については、心配はないとは思いますが、今後は問題のある従業員を採用してしまうこともあるかも知れません。
そうであれば、試用期間をできる限り長くしたいと考えますが、なにか問題はありますか?


確かに会社にとってみれば試用期間が長い方が安心ですが、新入社員としてみれば本採用の従業員に比べて身分が不安定な状態になります。
よって判例では長すぎる試用期間は公序良俗に反して無効であると判断されたケースがあります。


それでは、どの程度の期間が妥当なのでしょうか?


先程申し上げたとおり、法律で上限期間が定められている訳ではないのですが、1年を超えるような長い期間を試用期間とすることには問題があるでしょう。
一般的には3ヶ月から6ヶ月程度が妥当とされています。

また、諸事情があって業務に適性があるか判断し兼ねるような場合には試用期間を延長する必要も出てくることがあるかも知れませんが、その際にはあらかじめ就業規則に 「本採用の判断において、必要な場合には試用期間を延長することがある」 というように明示しておく必要があるでしょう。

この期間は従業員の身分が不安定となりますので、客観的に合理的理由なく無条件に延長してよいものではないことにも注意が必要です。


分かりました。 
試用期間もなかなか奥が深いのですね。
木戸部長、しっかり管理をお願いするよ。


分かりました。



 

 

 

今回は試用期間の法的ポイントについてご説明しました。 

試用期間は通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められますが、長すぎる場合については公序良俗に反し無効であるとされます。 

この限られた期間内で本採用の有無を判断しなければなりませんので、新入社員を配属した際には直属上長から定期的に報告させるルールを設けるなどし、試用期間中に確実に業務への適性を判断していきたいものです。

 

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