「事例から達成管理を学ぶ その1」 の続きです。
それでは、商品ごとに一番良い売り方を全店舗で共有化しよう、ということになりました。
その時のプロセス指標に使用したのがPI(ピーアイ)値です。
PI値=購買点数÷購買客数(来店客数のうち、商品を買われたお客様の数)×1,000
例えば、3,000人/日の購買客数のうち、A商品を100個お買上げ頂いたとすれば、
PI値 = 100個 ÷ 3,000人 × 1,000 = 33.3 となります。
このPI値を使用することによって、
店舗の大小(客数の多い少ない)という要素が除去できます。
具体的には、
ある1日の全店舗のA商品のPI値を比較すると、バラツキがあります。
これが、売り方の違い=販売業務のやり方の違いとなります。
このために、どのくらいの差が生じるか、想像つきますか?
この会社の事例で説明します。
この食品スーパーW社の青果部門の9月度の売上高は、1億8380万円でした。
この9月にどのくらい機会損失(チャンスロス)が発生していたのか計算してみます。
その金額は、なんと3,712万円です。
それも青果部門だけです。
青果部門の売上構成比率から推測すると、
会社全体の機会損失は2億622万円になります。
この2億622万円は、本当は実売上高にすることができたのです。
何故こんなことになったのか。
それは、商品ごとの売り方の違いを全店舗で共有化しなかったからです。
もし、W社にこの全店の商品ごとの売り方の違いを把握し、
毎日、全店に共有化するしくみがあったら…。
この情報の共有化はすごいですよ。
情報は、すでに我が社(W社)にあるものです。
これはノウハウです。
そのノウハウを 「優れた方法」 として、
販売・陳列・商品づくり・販促・計画・POPごとの
優れた売り方を一覧表にして確認しました。
それを後で見た社長が、目を点にして言いました。
「こんなこと当り前のことだ」 と。
そうなんです。 当り前のことなのです。
それを 「当り前」 で片づけてしまうから、共有化できないのです。
「それは当り前のことだ」
そう言われたら、もう質問できません。
「どうすれば良いのですか?」
その言葉は飲み込んでしまうしかありません。
達成管理のポイントはそこにあります。
当り前のことをいかに徹底させるかです。
そこで、次の仕組みをつくりました。
@ 各店舗のバイヤーが、1週間ごとの重点商品を10品目決めて、
各店舗へ 『基本売価連絡シート(自社で作成)』 で連絡します。
A 各店舗の各部門の主任は、その商品ごとのPI値と、
当日の売価を 『PI値報告シート(自社で作成)』 に記入します。
B 店長は、それを当日にFAXで商品部へ送ります。
C 翌日、各バイヤーはそれを分析して、
PI値の一番高い店舗の主任へ電話連絡し、
売り方の違いを 『情報共有化シート(自社で作成)』 にまとめます。
D そのまとめを、商品部長が全店へFAXで流します。
E その資料を基に、各主任は商品の売り方を改善し、
店長は指導に活用します。
F これを毎日実施します。
昨日の商品ごとの売り方の違いを確認し、
今日は、全店で最も良い売り方を共有する。
このスピードが早ければ早いほど、店舗間の業績のバラツキは少なくなります。
それは全社の業績が向上することを意味します。
では、この食品スーパーW社の達成管理をまとめましょう。
〇 店長は、毎日バイヤーから送られてくる情報を基に、
その重点商品の売り方を指導し、「やり切らせます」。
その違いはハッキリしています。
そして、PI値の向上を確認して、褒めます。
「A商品を〇〇〇のやり方にして良かったね。 PI値が伸びたよ」
それは、上司から褒められるということは、やっぱり嬉しいものですよ。
この説明を聞いて、少し心配になってくる方もいると思います。
「これじゃ、いつも受け身の主任にしてしまわないか。 自分で考えることは
なくなるかもしれない」
ご心配は無用です。
こういう達成管理を実施してくると、社員は初めて気づくのです。
「同じA商品でも、ちょっとした売り方の違いでPI値が大きく変わるんだな。
では、さらに工夫をしたら、もっとの伸びるかもしれない」
自分で考えて実行する。 こうなるのです。
この場合、達成管理に使ったプロセス指標はPI値でした。
プロセス指標があれば、「やり切る」 ことにより、いつでも社員を褒められます。
そして、自立した社員に育て上げることができるのです。
◎ もう1つ、付け加えなければならないことがあります。
1つの店舗には組織上の上司(直属の上司は常に1人です)がいます。
社長、役員、店舗運営部長、商品部長、もう数え上げたらキリがありません。
その方々に、絶対守ってもらいたいことがあります。
それは、この事例であれば 「売上高」 ということに関しては、このプロセス指標を確認しながら褒めて欲しいのです。
「店長、〇〇部門の〇〇商品、この1週間でPI値が1.5倍になったね。
素晴らしいね」
「主任、〇〇商品は、この1週間で1.5倍になったね。 〇〇という売り方が
お客様に支持されたんだね」
今までは、単に 『頑張っている』 という抽象的な褒め方だったけれど、今は違います。
しっかりとPI値を使った褒め方ができます。
具体的なプロセスが褒められます。
そして、当り前のことを徹底させることです。
そして、その他の問題が発生していたらメモを取りましょう。
間違っても、そこで直接、現場の社員に指摘して解決するのはやめましょう。
問題があれば、その組織上の上司に伝えて解決するように指示するのです。
そうしないと、また以前の仕組みのない世界へ戻ってしまいます。
そして、そのメモを基に、また次の仕組みづくりへと進みましょう。
仕組みをつくっても、経営者や経営幹部がそれを気付かずに壊していることが、過去に何度もありました。
ご注意ください。
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近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩