今回は、その5回目です。
次に簡単にすることです。
我が社において、能動的に賃金を上げることのできる種目を絞り込みます。
まずは大枠から検討しましょう。
A.基本給
B.諸手当
Bの諸手当の種類と割合は、減少させていくことです。
諸手当は社員の状況に合わせて支給するものですが、既にその役割は終わっています。
第一、諸手当が充実している会社だから良い会社だと言われること自体、おかしいと思わねばなりません。
自分の能力を向上させ、成果を上げなければ基本的に賃金は増えない。
その現実を知らせることです。
これは、優秀で今後も活躍を期待される社員を定着させる仕組みともいえるのです。
具体的に基本給の説明に入りましょう。
基本給は次の体系が一般的です。
基本給 |
属人給 |
年齢給 |
勤続給 |
||
仕事給(評価給) |
成長給、職能給、能力給 |
賃金制度がまだ未整備だったころは、この属人給は意識していたけれど金額は曖昧でした。
賃金制度づくりの必要性が生じ、外部へ委託したり、自ら研究して作成しました。
ほとんどが大企業の事例が参考です。
ところが、大企業はこの属人給の割合の引き下げに20数年以上も前から取り組んでいました。
そんなエピソードは表に出ないので過去の事例が基になり、属人給のウエートが大きくなってしまったのです。
最初はこれが正しい賃金制度だと思っていたのですが、運用してみると現状に合わないのです。
例えば、26歳の社員が
〇 年齢給の昇給 5,000円
〇 勤続給の昇給 1,000円
〇 成長給の昇給 1,000円
という会社があったら、社員はどういう考え方になるでしょうか。
自分の評価を上げようと思うでしょうか。
もし、評価が低くて成長給が昇給0円でも、年齢給と勤続給で6,000円は自動的に昇給するのです。
とんでもない決め方です。
賃金制度がないときに、こんな昇給の仕方をしていた社長が1人でもいたでしょうか。
いるはずがありません。
年齢が1つ増えたから、勤続年数が1年増えたから、賃金を増やしたのではありません。
評価が高くなったからです。
それを間違った賃金制度をつくったために、社員の向上心を失わせてしまったのです。
「これではいけない」 と思ったら、前述の例を次のように改定することです。
〇 年齢給の昇給 1,000円
〇 勤続給の昇給 500円
〇 成長給の昇給 5,500円
(現在、年齢給の昇給は35歳前後でストップ、さらには50歳位から減額するという会社も増えてきています)
これなら納得できるでしょう。
この昇給も、近年中に次のようにしなければなりません。
〇 年齢給の昇給 0円
〇 勤続給の昇給 0円
〇 成長給の昇給 7,000円
これを見た社員は、「ああ、会社に長く勤めただけでは賃金は増えないんだなあ」 と理解することになります。
まずは、基本給の属人給と仕事給の割合を変えましょう。
この割合の検討はモデル賃金で行うことになります。
基本的には次の点を検討します。
モデル賃金上で属人給の割合が半々になるのは何歳でするか、ということです。
つまり、賃金を増やすには成長給を増やすしかない、という年齢を何歳にするのかです。
いつまでも属人給の割合が大きいと、評価による差がつけられません。
一般的には35歳位以降が実力や成果に大きな差が出てくるので、それに合わせて賃金カーブを設計します。
次号に続きます。
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新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩