経営は環境適応業と言われています。
そうであるならば、現在の経営環境に適応していかなければなりません。
そのヒントを社内から至急見つけ出すこと、それが社長の仕事です。
ある会社は、優秀社員に対して 「賞状」 を出して表彰しています。
この 「賞状」 というのは、優れた成果を出した社員のその行動を認める 「ツール」 です。
「ツール」 は何であっても良いのですが、全社的に認める仕組みを作ることが大変重要なのです。
社員を動機づけるということは、経営者・管理者にとって組織運営上の最大のテーマと言って良いくらいです。
この動機づけの方法が分かったら、どんなに組織運営が楽になるかと思ったことが、しばしばあるでしょう。
実は多くの創業社長の誤解していることがあります。
創業社長は企業経営において、次の段階を経ます。
生業 ⇒ 家業 ⇒ 事業
生業とは、生きるために業を行う段階です。
ここでの “生きる” とは、生活をするための経済水準を獲得することと同じです。
どのような経営理念を持とうとも、素晴らしい使命感を抱こうとも、今日生活するお金がなければ経営の継続はできません。
自分の収入を増やし生活を安定させることが、創業社長の自分に対する1つの動機づけです。
そのことを通じて、結果として世の中から認められていることを間接的に確認するのです。
もともと、社長自身が第三者から認められるということを経験することは “まれ” です。
この経験のないことが、自分も社員も動機づけの要因は同じと勘違いするのです。
それは 「収入が最大の動機づけ」 という誤解です。
やがて、生業段階で経営者が忙しくなると、まずは親戚の労働力が駆り出されます。
1つの運命共同体のようなものです。
この家業段階では、安定した状態にはまだなり得ていないことが多く、そのため賃金が滞ることなど日常茶飯事です。
「今月は売り上げが少なかったので、賃金は少ない。我慢してくれ」 の一言で済んでしまいます。
「それは困る」 と思う人がいても問題化することはありません。
すぐに 「来月は頑張ろう」 ということになります。
ここでも経済的なことが動機づけ要因になっています。
「収入を増やそう」 という気持ちが 「やる気」 を生み出します。
創業社長を中心とする家族・親戚である従業員は、そう考えて頑張ってきました。
ところが、家業段階でも人手が足りなくなると、次の事業段階になります。
血縁関係のない社員の採用が始まるのです。
この社員に対する動機づけ要因も自分たちと同じだろうと錯覚するところから、動機づけの失敗が始まります。
当然ながら、賃金は多い方が良いに決まっています。
しかし、賃金を増やすことが動機づけ要因にならないのです。
中小企業の社長は、このことを十分に理解しなければいけません。
このことを社内で観察すると、納得して頂けるでしょう。
社内で成長してきた社員は、どういう社員でしょうか。
改めて思い返して欲しいのですが、少なくとも、賃金のことだけを口にしている社員は、思った以上に成長していないのではないでしょうか。
実はこの点について、50年も前にフレデリック・ハーズバーグというアメリカの心理学者が面接調査の分析結果を、「動機づけ要因と衛生要因」 として発表しているのです。
この分析結果は、現在でも動機づけの基礎とされています。
最近もある雑誌の特集を読みながら、この理論が生きていることが再確認できました。
この実験の結果をご紹介しましょう。
特に注目すべき点は、衛生要因です。
衛生要因が悪いと、社員は不満になりますが、その不満を取り除くことができても、社員に 「やる気」 を起こさせることは出来ないという点です。
その中に 「賃金・給与」 が入っているのです。
つまり、昇給をしても社員にやる気が起きないということです。
この点を社長は忘れてはいけません。
次号に続きます。
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新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩