成長シートが完成すると、残りのプロセスには弾みがつきます。
ここが1つの大きな山と言えます。
成長シートが出来上がったら、評価者訓練。
これが一般的に言われていることです。
これがクセモノです。
評価者には、評価するときに評価のバラツキが出ると言われています。
通常、言われる甘辛評価です。
A課長は評価が甘い。 B課長は評価が辛い。
これを経営者が修正しようとするのですが、これはやってはいけません。
納得できる評価決定が出来ません。
経営者から 「甘い評価だ、辛い評価だ」 と注意された後の、評価者の評価を見れば分かります。
〈甘いと言われたA課長〉
部下の評価を1〜2点、すべての評価要素の評価を下げる
〈辛いと言われたB課長〉
部下の評価を1〜2点、すべての評価要素の評価を上げる
これで正しい評価ができた、と思ったら大間違いです。
この評価をした後には、部下へのフィードバックがあります。
そのフィードバックをする場で、上司がその評価を正しく説明できるでしょうか。
甘辛調整をやったら、上司は部下には説明できません。
ある会社で、甘辛調整した上司が部下へフィードバックする場面を想像して下さい。
「今回の評価を説明します」
「A評価要素の評価は、本当は5点だと思いますが、甘辛調整をしましたので3点になりました」
これを聞いた部下が、
「はい、そうですか」
と答えるかということです。
それはあり得ません。
万が一、
「はい、そうですか」
と答えたとしても、次の質問には答えられません。
「では、どうすれば5点の評価になりますか」
上司は目を丸くして 「………」 です。
評価結果のフィードバックはこれが重要です。
フィードバックでは、2つのことが行われます。
@現在の評価の確認 ※過去の振り返り
A将来の目標の確認 ※成果・行動の目標設定
Aのないフィードバックは、あまり大きな成果を期待できません。
部下が次の四半期(3ヵ月間)で、どこまで成長したいかという本当の目標確認したときに、これからの上司と部下のコミュニケーションのスタートが切って落とされるのです。
上司・・・部下の目標実現を指導する人
部下・・・上司に目標実現を指導してもらう人
この立場が明確でないと、
部下が上司の指示命令、そして教育指導を受けない
ということになります。
甘いとか辛いとか言っても、何の問題解決にもなりません。
では、どうしたら良いか、それが成長支援会議(評価決定会議)です。
ある会社で、営業事務社員の評価について、成長支援会議を実施しました。
成長シートが出来て、第1回目の成長支援会議です。
各営業事務リーダーが集まっての会議となりました。
この会社では、今まで評価にバラツキがあって甘辛が大きすぎるという問題点を抱えていました。
そのため、経営者が1人で甘辛調整をして、昇格・賞与配分決定に反映させていました。
もちろん、甘辛調整後の評価内容は、本人にはフィードバックしたことはありません。
そのため、教育指導のデータとしては使えません。
もったいない!
処遇を決めるための参考資料として、評価制度があるというパターンです。
今回は、成長支援会議を実施し、部下に評価をフィードバックしようということになりました。
事務リーダーがお互いにどのような評価をしているのか、知らされていませんでしたが、今回は部下の評価結果が一覧表になっています。
もちろん、このままですと評価の違いをすぐ見つけ出すことは難しいので、評価結果一覧表の作り方を工夫します。
〇入社年次ごとに
〇総合点数の高い順に
〇並べ替える
こうなると、評価の違いが疑問となって出てきます。
基本的に入社年次が同じであれば、同じ評価になる可能性が高いです。
ところが、評価要素によっては、1点〜5点までバラツキがあります。
そこでお互いに質問です。
事務リーダー Aさん
「安倍さんは、積極性の評価が5点と高いですが、その理由を教えて下さい」
質問されたB事務リーダーは答えます。
事務リーダー Bさん
「安倍さんは、問題が発生してもすぐ、上司である私に支援を求めず、自分で解決しようとして
います」
「それが自分にとって初めての問題だとしても逃げることはありません」
「先日も△△△のクレームが発生しましたが、見事に解決して私に報告しました」
社長
「おおー、それはすごい」
「これは、私たちも見習うほどの積極性だ」
すると、別の事務リーダー発言しました。
事務リーダー Cさん
「私のチームの小泉さんの積極性の評価を5点から4点に変更します」
「今の話を聞いて、私の部下の小泉さんはそこまで出来ていません」
これが成長支援会議の実況中継です。
ここでやっていることは、成長シートの成長基準を普段の仕事で説明するということです。
つまり、成長基準の解釈の統一です。
この成長支援会議を通じて、
〇正しい評価の仕方
〇成長基準の解釈の統一
〇部下指導のポイント
を学ぶのです。
この会議を実施すれば、上司は胸を張って部下に説明できます。
今までは評価に自信がなかったのです。
今度は自信を持って説明できます。
お気軽にご相談ください。
新・人事制度研究会/近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩
