人事制度は経営課題の解決方法の1つです。
もちろん、日々発生する経営上の問題を解決する方法の1つでもあります。
経営者が、人に関する問題発生時に根本的な解決を図ろうとすると、やっぱり人事制度を見直すことになります。
通常は、その 「根本的な解決」 をしようと決断するまでには、いろいろな表面的な個別対応をしています。
例えば、何といっても定番は、将来の活躍を期待している社員が 「辞めたい」 と言ってきたときの対応です。
その引き止め策の一般的なものが、個別対応としての臨時昇給です。
もちろん、社内では内緒です。
ところが、この事実が社内に広がるのには、多くの時間を必要としません。
そして、いつの間にか臨時昇給の可能性だけが独り歩きをしてしまいます。
そうなると、賃金制度は機能しなくなるのです。
人事担当者も、各社員の賃金がどのように決まったのか、過去の経緯についてはさっぱり分からない状態になります。
これでは、賃金制度について社員の誰もが関心を持てなくなるのは当然と言えば当然でしょう。
この状態から抜け出さない限りは、社員の納得できる賃金制度にはなりません。
そこで賃金制度の抜本的な見直しとなります。
賃金制度の抜本的な見直しをしたら、賃金に対して不満が出た場合の対応は、今までとは180度違います。
個別に賃金額を変更するという対応はもうやりません。
その対応の手順とは、
1.賃金制度のみならず、人事制度全般の問題点を検討します。
2.問題点を解決するために、人事制度全般の見直しをします。
3.その見直し終了時に、その社員の賃金額が変更になるかを検討します。
もし、その社員の賃金額が変更になるのであれば、それ以外の社員も変更になる可能性があります。
その時は、そのように対応してください。
もし、その社員の賃金額が変更にならないのであれば、その通りその社員に説明してください。
「それでは、その社員が辞めてしまうかもしれない」
そう心配されるかもしれません。
しかし、結果がどうなろうと個別対応はあきらめてください。
経営者がすべて決める今までのやり方から変革するのです。
ほとんどの場合、この個別対応は、経営者の判断によってなされますが、判断材料は規模拡大(社員数増大)に伴い、かなり少なくなってきます。
ましてや、管理者が存在するのであれば、その判断を早晩管理者に委ねることになります。
その場合、すべての管理者が同じ判断(評価)をできるように仕組みを作るのが経営者の仕事です。
社員が自分の賃金を上げる方法は、評価を高めること以外にない、と分かった時に、初めて評価を高める行動をとり、成果を上げるのです。
組織とは不思議なもので、1つのルールに従って運営されるようになると非常に安定するものです。
近い将来、賃金の問題で退職願いを出す社員はいなくなるでしょう。
もし、そういう社員が出たとしても、それはその社員の評価が低いからです。
過去において、本人も一生懸命、上司も一生懸命であったのなら、残念ながらそれは1つの選択肢です。
元来、人事上の問題は3つに分類されます。
A.社員が定着しない
B.社員が成長しない
C.入社希望者が少ない
この3つの問題に分類して、組織内に発生している些細な問題を見つけ出すことです。
定着しないという問題で、経営者が 「困った」 と考えるのは、経営者が期待していた優秀な社員が “辞める” と言ってきた時です。
あまり優秀ではない社員が辞めたい、言っても驚くことはありません。
しかし、このあまり驚くことのないことから、すでに問題は発生しているのです。
この時に、「何故この社員は辞めたい」 と言ってきたのだろうと、組織内の問題を見つけて解決しておく体制が必要なのです。
それを怠ると次には、まぁまぁの社員が辞めたい、と言ってきます。
そして最後には、優秀な社員が辞めたい、と言ってきます。
その時に問題だと騒いでも、時すでに遅しなのです。
〇小さな問題は、小さな解決で済み
〇大きな問題は、大きな解決になる
大きな問題になったら、解決策は抜本的な解決策が求められることになります。
これには経営者の決断が求められます。
お気軽にご相談ください。
近藤経営労務事務所/新・人事制度研究会
社会保険労務士 近藤 昌浩
