「人事制度は、社員を成長させる仕組み」 との理解が定着しつつあります。
しかしながら、『成果主義 賃金制度』 と 『成果主義 人事制度』 の違いが誤解されているようです。
『成果主義 賃金制度』 を端的に言えば、
「成果の上がった社員は賃金を上げる。成果の下がった社員は賃金を下げる」
という意味です。
例えば、
〇出来高払い賃金
〇フルコミッション賃金
を思い浮かべて頂ければ、ご理解頂けるでしょう。
この 『成果主義 賃金制度 』 では、事業展開は難しいことがあらゆる企業で経験済みです。
〇個人の成果だけを見て個々の賃金を決める
このように発表した会社では、「情報を共有して全社員で良くなろう」 という組織風土は絶対に根付きません。
そこには 「感謝」 も 「信頼」 も生まれません。
ただ、「自分さえ良ければいい」 という考え方だけです。
社員は何かの縁で、日本全国におよそ200万社もある会社の中の1社に集まりました。
不思議な縁です。
この中で、ひとり一人が自己実現を目指し、それをお互いに協力し合う場所が会社であると、私は信じています。
社員が10人いれば、十人十色です。
適所を得て、自分の能力を飛躍的に伸ばす社員もいるでしょう。
中には、鈍重でゆっくり育つ社員もいるでしょう。
そのゆっくり育つ社員を否定せず、周りがその社員を指導教育しながら暖かく見守っていく組織であってほしいと思うのです。
1つの会社の中で継続して伸びていくスピードは違っていても、思いは一緒です。
「一緒に良くなろう」
この意思で統一されたときに、『成果主義』 という言葉は生きてくるのです。
企業の成果は、全社員の成果の集合です。
成果が上がらなければ、当然ながら、昇給・賞与の額は高くならないでしょう。
しかし、それは今年の結果であり、今後もそうであってはいけません。
来年は、もっと成長して、成果を上げよう。
そして、「みんなの賃金を良くしよう」
この意識を生み出せるかどうかです。
今年の成果で、これからのすべてが決まったわけではありません。
これが理解されていないようです。
成果主義というと、全社員を 『成果を上げた社員』 と 『成果を上げていない社員』 に瞬間的に峻別しようとする傾向がありますが、これでは社員は不安になります。
どうしても自分だけは 『成果を上げた社員』 に入ろうという気持ちにさせます。
そうすると冷たい空気が職場に流れ、マイナス思考が蔓延します。
これは何度も経験していることです。
こうならないで欲しいと思うのです。
だから、正しい 『成果主義 人事制度』 を導入してください。
『成果主義 人事制度』 には、必ず次の4つの制度が不可欠であることを確認してください。
〇評価制度
〇賃金制度
〇昇進昇格制度
〇教育制度
この 『成果主義』 について、もう一つ付け加えておきます。
今までの日本の人事制度は、次のような変遷があったとされています。
〇年功主義 ⇒ 能力主義 ⇒ 成果主義
これを言葉通りに解釈しないでください。
通常は、次のように理解しているでしょう。
〇年功主義・・・永く勤めたことを評価する
〇能力主義・・・能力のあることを評価する
〇成果主義・・・成果の高いことを評価する
中小企業でこの考え方で人事制度を見直してきた会社は皆無です。
結果として、そのようになったというだけです。
いつの時代も、人事制度について正しい理論があったわけではありません。
間違っても理論に飛びつくのではなく、じっくりと御社の中で 「どうやったら社員は元気に楽しく育つのか」 ということを自問自答してください。
考える以上に答えは簡単でしょう。
何故なら、御社の中には必ず元気に楽しく成長している社員がいるからです。
参考までに、今までの理論としての人事制度の考え方をまとめておきます。
年功だろうが、能力だろうが、それはすべて成果を上げたときに必要なものとして評価されてきました。
それは、今でも同じであり、何ら変わることはありません。
ただ、成果を上げるための具体的な内容を明らかにすることが遅れているのは確かです。
今、私たちが必要としているのは、まさに成果を上げるための、その具体的な内容です。
それが 「成長シート」 に明らかにされることにより、
全社員のスピードの違いはあっても、成長が可能となり、その結果が業績の向上となります。
すべての企業で、それを目指さないところはありません。
企業は創業期から今日まで、ずーっと成果主義と言えるでしょう。
お気軽にご相談ください。
近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤 昌浩
