新賃金制度を導入するときに目につくのが残業手当です。
何が問題なのでしょうか。
社員数200人の会社の事例で説明します。
3年前に人事制度づくりをしました。
その1年後に、
賞与配分決定シミュレーションソフトを使って、社員個々の賞与配分額を決定しました。
そのときの実データは次の通りです。
〇賞与総額 6千万円
実はそのときの残業手当が、月平均でどのくらい発生していたかというと、次の通りです。
〇月平均残業手当合計 5百万円
つまり、6ヵ月間で3千万円の残業手当を支給していたのです。
もし、
残業なしで当時の業績を実現していたら、
賞与総額は9千万円にすることができた
のです。
人件費総額管理をすれば分かりますが、
残業手当が増えれば、そのぶん賞与原資が減ります。
この事実を知っている会社は予想以上に少ないと感じています。
でも、社員にとっては、残業をして残業手当を稼ぐことは、
自分の賃金額を増やす1つの方法になりがちです。
計算も分かりやすいですよね。
もちろん、残業をしている全社員が同じことを考えているとは思いませんが、
この問題を解決しなければならないでしょう。
まず、残業をしないで、決められた時間内に業務を終わらせる工夫をすることです。
今までにずいぶん生産性向上の支援をしました。
「では、生産性向上の計画を立てましょう」
この発言に対して、ほとんどが冷たい視線を投げかけるのです。
すべて理由は1つです。(これが本音の部分です)
「一生懸命に生産性を向上させたら、残業手当がなくなるのでしょう。
それでは、頑張って自分の賃金を下げるようなものです。本気で取り
組む社員は、多分いないでしょうね」
社員にとっての残業手当は、生活資金の一部になっているのです。
これでは、生産性向上は進みません。
そこで、支援先の社長の了解を得た上で、次のように発表します。
「これから1年間、生産性向上に取り組みますが、残業手当は一切カットしません。 過去の
実績のまま支給します。 ですから各業務のやり方を改善して、生産性を高めてください」
「そして次年度は、過去の実績の50%の支給をします。 もちろん定時に帰っても、残業手当
の支給は続けます。 1つだけ確認しておきますが、そのカットされた残業手当の50%は賞
与原資となり、皆さんに配分されます」
これで社員みんなが納得です。
もちろん、過去のデータを使って説明することは言うまでもありません。
これが理解されると生産性の向上は一気に進みます。
逆に言うと、これは一気に進めなければならないと私は考えています。
その理由は1つだけです。
現時点では、「残業」 と、それによる 「成果」 が把握されないことです。
成果に結びつく残業なら、それは業務命令でやってもらうことになります。
しかし、その残業が必要なければ、やめさせなければなりません。
すべての残業は、業務命令によって実行されることになります。
残業は自分勝手にするものではないのです。
ところが、サービス残業の存在があります。
これをありがたく思っている管理者がいますが、これは問題です。
「生産性向上? そんなのいいよ。 サービス残業だから勝手にさせてよ」
このようにサービス残業中は管理不能時間帯となってしまいます。
今まで生産性の分析をして分かったことは、
サービス残業をしている会社は極端に生産性が低いということです。
この状態では、本当に残業が必要となったときに、社員は何と言うでしょうか。
「もう、限界です」
こうならないためには、常に生産性向上を意識しなければなりません。
次号に続く
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近藤経営労務事務所/新・人事制度研究会
社会保険労務士 近藤 昌浩