今回は達成管理について説明しましょう。
そのイメージを掴んでもらうために、1つの成功事例をご紹介します。
これは、小売業U社の事例ですが、販売業、卸売業、製造業など、あらゆる業種に応用できます。
御社であれば、どのようにやれば良いのかを考えながら読まれることをお勧めします。
この事例は売上高200億円くらいの規模までは十分に活用できる内容です。
別な言い方をすれば、
200億円までは、この達成管理の仕方で成長することができるということです。
その価値は1,000万円以上です。
そのつもりで読んでください。
一般的に小売業では、店舗に対して次のような指導をしています。
@ 接客を上手に指導しなさい
A お客様を考えて品ぞろえをしなさい
B 品質管理をしっかりしなさい
C クレンリネスを徹底しなさい
D チャンスロスをなくしなさい
毎日、何らかの指導が店長、または主任に対して行われています。
それは何故でしょう?
言うまでもありません。
売上高や粗利益率の向上のためです。
この売上高や粗利益率の結果指標を向上させるため、
店舗内での問題点を指摘し、解決を迫っているのです。
この方法では、結果指標は良くなりません。
お約束できます。
理由は簡単です。
それぞれの 「やるべきこと」 をやっても結果が良くならないことがあるのです。
それは次の計算式にヒントがあります。
売上高 = 客数 × 客単価
もし、店長が販売計画を緻密に立て、仕入れをしたとしましょう。
その結果、チャンスロスが全くなかったとします。
この場合、客単価は確実に向上します。
しかし、この日に客数が何らかの理由で減少したとします。
そうなると、売上高が減少することがあるのです。
もし、結果指標だけで指導している会社の店長なら、次のように考えてしまいます。
「時間をかけて販売計画を立て、仕入れ数量もよく検討して仕入れた。
まったくチャンスロスはない1日だった。ところが、売上高は減少している」
このように考えると、店長はチャンスロスをなくしても、
売上高を向上させることにはならないと思い込むようになります。
これは店長自身にとっては失敗体験に近い印象です。
この後、いくら店長に 「チャンスロスをなくせ」 と言ったところで、
本気で取り組むことはなくなります。
言ってもやらないという状況が続きます。
このとき、もし、「チャンスロスをなくす」 という業務を遂行したときの指標に、
お客様1人当りの買上点数を使用したらどうなるでしょうか。
〇チャンスロスの減少 = お客様1人当りの買上点数
これは直結です。
今までチャンスロスがあった時と、
チャンスロスがなくなった時の買上点数比較をすれば、差は歴然としています。
今までやっていた業務を改善することによって変わる指標があります。
それをプロセス指標と言います。
行動が変わればプロセス指標が変わります。
〇 行動が変わる(今までの行動が改善される)
〇 プロセス指標が変わる
〇 結果指標が変わる
このプロセス指標を使って、
毎日、上司は部下に対して達成管理をするのです。
えーっ、毎日! と驚かないでください。
仕事をどのような過程で回すことが効率よく業務を行えるかというと、
マネジメントサイクル(Plan 計画 ⇒ Do 実行 ⇒ Check 評価 ⇒ Action 改善)は、
早く回した方が、その分、結果は良くなります。
「でも、毎日では部下も大変だろう」
もし、このように考えるのであれば、
それは、今までの結果指標による達成管理をイメージするからです。
この達成管理にはプロセス指標を使用します。
そして、プロセス指標の良い店舗の情報を収集することに重点がおかれます。
(プロセス指標の低い店舗の情報を聞くことは一切しません。言い訳しか聞けないからです。
しかも、一所懸命であるということに違いはないのですから、ほとんど時間の無駄です)
次のように、プロセス指標の高い店舗へ電話します。
部長 「〇〇(プロセス指標)が昨日は全店舗で一番高かったよ。何かやった
ことはある?」
(これは、ハーズバーグの 「動機付け要因」 の 『承認』 です。それを聞いた店長は、達成感を味わうことはいうまでもありません。)
店長 「実は、昨日、〜〜〜をやってみました。これが結構うまくいきました。
それが良かったのだと思います」
(これは、本人にとっては成功体験であるとの認識になり、次の成功体験を目指すことになります)
部長 「そうか、それはいいねえ。素晴らしい内容だよ。これからも、ぜひ続
けてください。」
(上司も電話一つで我が社の成功事例を入手できました。上司の過去の成功体験を超える成功事例です。これがとてもありがたいのです。そして、この成功事例を全店舗へスピーディに提供します。次の営業会議まで待っていたら、それこそチャンスロスが生じるからです。情報提供が遅れれば、マネジメント不足によるチャンスロスの発生です。これは大きい損失です。絶対に避けなければなりません)
さて、U社の事例に戻りましょう。
U社には、毎日、次の2つの情報(プロセス指標)がFAXで送られてきます。
〇商品1品当りの平均単価
〇お客様1人当りの買上点数
この2つのプロセス指標さえ、
達成管理に使用していれば売上高はグングン向上します。
その向上の根拠もすべて説明できます。
そのために、1つのルールを守ることは必要です。
店舗段階で取り組む 「改善テーマは1つに絞る」 ことです。
その改善テーマが終了しない限りは、次のテーマに入らないことです。
経営者の立場で考えれば、
改善してほしいことは数限りなくあり、それは増加傾向にあります。
しかし、数多くの改善テーマを提示したら、現場はどのようになるでしょう。
結局、何も改善していません。
このことは小売業に限らず、
販売業、卸売業、製造業、あらゆる業種で経験済みです。
挙句の果ては、毎年同じことを言い続けることになります。
この状態から抜け出さない限り、結果は良くなりません。
次回は、
2つの具体的な改善テーマを 「例」 に挙げて、達成管理のやり方をご紹介します。
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近藤経営労務事務所/新・人事制度研究会
社会保険労務士・人事コンサルタント 近藤 昌浩