【改善テーマ@】 … 開店時の品揃え率100%の実現
小売業で開店時の品揃え100%を目指していない会社はないでしょう。
ところが、これが出来る店舗と出来ていない店舗があります。
何度 「100%にしろ」 と言っても、出来ていない店舗の店長は言い訳をするだけで改善されません。
この開店時の品揃え率の違いが、
お客様1人当りの買上点数の違いであることを説明できる会社はほとんどありません。
この開店時の品揃え率の違いは、お客様1人当りの買上点数の違いとなっています。
次のデータを収集すると、ハッキリわかります(データはサンプルです)。
〇開店時の品揃え率80% ⇒ 開店時から12時までのお客様1人当り買上点数は1.7点
〇開店時の品揃え率100% ⇒ 開店時から12時までのお客様1人当り買上点数は2.4点
つまり、品揃え率の20%の差が、お客様1人当り買上点数の差0.7点の差となっているのです。
これを売上高にすると、どのくらいの差となっているのか計算してみましょう。
例えば、客数(開店時から12時まで)が1,000人だとします。
商品1品当りの平均単価は500円としたら、
〇売上高(1日)=1,000人×500円×0,7=350,000円
なんと、1日35万円のロスが生じているのです。
1ヵ月で換算すると、
〇売上高(1ヵ月)=350,000円×30日=10,500,000円
1ヵ月1,050万円のロスです。
1年間に換算したら、気が遠くなりそうです。
しかし、これは実現可能な金額です。
そこで、次のような達成管理を実施します。
改善テーマは、「開店時の品揃え率100%の実現」 です。
開店時の品揃え率をプロセス指標として活用します。
そして、その間は他の改善テーマを全店で採り上げることはしません。
経営者はぐっと我慢です。
毎日、販売日報で 「開店時の品揃え率」 を報告してもらいます。
(この品揃え率の算出方法は、簡便法でやります。正確にやるとすれば、毎回の品揃えすべきアイ
テムを調べ、開店時の品揃えをしたアイテムを開店時に調べなければなりません。その方が正確
ですが、時間がかかり過ぎます。そこで品出ししていないフェース数を数えるだけです。それであ
れば、簡単にできます。)
ある店舗は、この改善がスタートした時点で、開店時の品揃え率は既に100%です。
しかし、ある店舗では、80%くらいの品揃えは出来るのですが、そこで足踏み状態です。
なかなかそれ以上の向上はありません。
そこで、その店舗へ、他店舗の成功事例を情報として提供し続けます。
例えば、
1.勤務シフトの作り方
2.商品加工の段取りの仕方
3.開店時までの加工数量の算出の方法
4.品出し手順の工夫の仕方
5.陳列場所の工夫
などです。
共有化する時点で分かってくるのですが、仕事の違いはいつもチョットしたことなのです。
でもその効果は絶大でした。
この情報が全店舗で共有されます。
この過程で組織は、考える組織(ラーニング・オーガニゼーション)になっていました。
この開店時の品揃え率向上の改善テーマは、1年以上も続きました。
全店舗が、これを実現できた時に、終了します。
【改善テーマA】 … 値ごろ改善
業態によって 「値ごろ」 が決まっています。
そのため、現場で工夫することはありません。
ほぼ全店共通の売価設定になっています。
ところが、この 「値ごろ」 については正確な根拠はありません。
それは、この値ごろはお客様が決めるものだからです。
ある年に、年間スケジュールに他社の店舗見学を計画しました。
繁盛している同じ業種・業態を見学するのです。
その中で、同じ商品であるのに、まったく違う売価で販売している店舗がありました。
その商品は3フェースでボリューム陳列をしています。
「売れている」 ことは間違いありません。
そこで、各店舗へ実験的に、値ごろの変更を許可しました。
事前に報告の上で、新しい値ごろの挑戦です。
例えば、ホタテ貝柱を
〇1パック3〜5玉 200円売りから
〇1パック300グラム 780円売り
への挑戦です。
これが、爆発的な販売数になります。
今まではチョットした酒のつまみだったのが、カレーやシチュー、
そしてバター焼きへと、料理のレパートリーを広げたい主婦層の支持を得たのです。
結果として、ホタテの値ごろは大きく変わりました。
〇200円 → 780円
この商品の販売数量が増えるにつれて、
全体の商品の一品平均単価が、向上することになります。
もし、この平均単価が仮に、5円向上したらどうなるでしょうか。
客数(1日)3,000人で、お客様1人当りの買上点数は2.4点とします。
〇売上高(1日)=3,000人×2.4点×5円=36,000円
既存の商品を新しい値ごろで挑戦して、成功したので、商品1品平均単価が5円向上しました。
これが理解できた時の、店長の喜ぶ姿が想像できますか。
もちろん社員も一緒に取り組みますから、全社員でエキサイティング状態になるのです。
楽しくて仕方がない。
次はこの商品で挑戦してみよう。
1人ひとりの社員が、「自ら考える社員」 = 自立型社員 になっているのです。
内発的動機づけとは、このような形でするものなのです。
仕事を楽しくやる仕組みづくりが先ですね。
この値ごろ(感)の挑戦も1年くらい続きましたが、このテーマは商売を継続するのであればエンドレスです。
しかし、1人ひとりの社員が考える習慣を身に付けた段階で終了となりました。
この社員1人ひとりが考える習慣を身に付けて、
実行力を発揮するようになると、どのくらいの経営効果があるかを確認しておきましょう。
8年間で、
〇商品1品当りの平均単価が、350円 ⇒ 650円へ 1.9倍
〇お客様1人当りの買上点数が、1.2点 ⇒ 2.4点へ 2.0倍
となりました。
これは、来店客数が同じでも、売上高が約4倍になったことを示しています。
今までのやり方を楽しく工夫改善して、それを継続したら、
〇年商50億円の売上高が
〇年商200億円の売上高になった
ということですよ。
これに同業界のトップは誰も気付いていないことに驚かざるを得ません。
無理して売上高を追求したのではありません。
経常利益も6〜8%をキープしていますからダントツでトップです。
あなたの会社もダントツでトップの利益率を目指してください。
それが、この達成管理のやり方です。
このやり方のメリットを掲げたらキリがないくらいあるのです。
〇経営者は現場の状況がよくわかる
〇管理者は具体的な指導ができるようになる
〇社員は自立型社員へと脱皮する
〇結果として、業績が飛躍的に向上する
良いことづくめです。
人事制度」 で、社員の成長 と 業績向上 の支援をいたします。
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近藤経営労務事務所/新・人事制度研究会
社会保険労務士・人事コンサルタント 近藤 昌浩