成果の上がる優秀社員の仕事のやり方と、
成果の上がらない社員の仕事のやり方の違いは、
業務を各プロセスに分解すると 「違い」 が分かってきます。
その 「違い」 を見つけて共有化することで、多くの企業が業績向上を実現してきました。
でも、その過程でさまざまな問題に遭遇しましたので、そのいくつかをご紹介しましょう。
A社(販売業)
この会社では、
優秀な営業社員と、そうではない社員の 「違い」 を分析すると、
営業プロセスの中の 「情報収集」 にどうも違いがあることが分かりました。
私は経験上、この優秀な営業社員が、自分で独自に 「情報収集」 のためのツールを作っていることを感じていましたので、この社員に聞きました。
「何か、独自にツールをお持ちですね」
「いえ、ありません」
彼は首を横に振るのです。
本人がないと言う以上、それ以上の詮索はできません。
上司である営業所長に聞いても、「そんなの見たことない」 ということです。
そこで、営業所長と優秀な営業社員3名に集まってもらい、その 「違い」 を明らかにすることにしました。
この会社では、
提案をする前には 「きちんと必要な情報を集めろ」 という指導をしていました。
提案の段階となると、事前に、所長はその提案書のチェックをするのです。
そこに情報の漏れがあると正しいニーズ分析ができませんので、
場合によっては、もう一度お客様の所へお伺いして情報を集めています。
もちろん、優秀な営業社員は情報収集内容に不足はありませんので、
このようなことはありません。
そこで私は、集まってもらったメンバーに話しました。
「提案する商品によって、集める情報の種類と数には若干の違いがあります」
「しかし、基本項目は同じでしょう。 この情報が的確に集められなければ、
提案はできませんので、現在は勘の世界での仕事なのでしょう」
「これでは経験がなければ難しいことですね。 この状態から抜け出したいと思います」
「そのために、営業活動で必要な情報があるのであれば、
『情報収集シート』 という形でまとめたいと考えております」
「そこで皆さんの知恵をお借りしたいのです。
『いや、そんなことは教えられない』 というお気持ちもあるでしょう」
「また、『自分たちにメリットはあるのか』 と考えているかもしれませんが、
大いにあるのです」
「優秀な営業社員が優秀な理由がわかるのです。
その優秀である理由がわかれば、もっと優秀になれるのです」
「現時点の業績がゴールではないのです。 もっと高い目標にチャレンジできることに
なります。 皆さんは、もっと高い目標を実現したいですか」
「ハイ」
誰でも答えは同じです。
いよいよ、何をお客様から情報取集したら良いかを検討しました。
その結果として、集める情報が7項目に絞られました。
これが集められればニーズ分析ができ、
誰でもベストな提案が出来ることになります。
そうしたら、ある社員がポツリと言いました。
「私はもう1つ聞いています」
「それは何ですか」
「提案する内容を最終的に決定する方、つまり意思決定権者の名前です」
「その通りですね。 面談している方が最終決定権者とは限りません。
それが分かれば、提案書の書き方は変わってきますよね」
他のメンバーが、
「えー! それが簡単に聞けるとは思わなかった。 すごいなあ〜」
「それが意外と簡単なんですよ。 実は〜…」
これで収集する情報は8項目になり、1枚の情報収集シートにまとめ上げられました。
A社にとっての最強の営業ツールです。
これで情報収集のプロセスで悩んでいる営業社員の問題を一挙に解決です。
このミーティングには1つオチがありました。
私がこのA社から帰るときに、
その優秀な営業社員のうちの1人がそっと1枚のシートを見せたのです。
それは2時間のミーティングのアウトプットである 「情報収集シート」 と
瓜ふたつのシートでした。
「すみません。 まさか、このような結果になるとは思っていませんでした」
申し訳なさそうな社員を見てアドバイスしました。
「そのツールを皆さんに見せなかった気持ちはよくわかります。
でも、このツールも社内外の環境が変われば変わるでしょう」
「ツールを全社員で見直していったら、もっと素晴らしい社員に役立つものに、
どんどんスピーディにブラッシュアップされていきます」
「それは全社員にとって有難いことです。 情報(優れた仕事の仕方)とは面白いもので、
情報を発信した人のところへ情報が集まることになります」
「絶対に損をすることはありません。 ご心配なく」
嬉しそうな顔に変わったその社員を確認して帰途につきました。
次号に続く。
人事制度」 で、社員の成長 と 業績向上 の支援をいたします。
お気軽にご相談ください。
近藤経営労務事務所
社会保険労務士・人事コンサルタント 近藤 昌浩