御社では36協定を届け出ていますか? ⇒重要なことです。
今年の4月に改正労働基準法が施行されたこともあり、
いま36協定が注目されています。
従業員に残業をさせる場合は、事前にやるべき手続きが
あります。
労働基準法では、
@従業員の労働時間の上限は、1週40時間、1日8時間までとなっており、
これを法定労働時間といいます。
そして、
A1週間に1日、または4週間に4日の休日を与えることとされており、
これを法定休日といいます。
会社が従業員に、
@の法定労働時間を超えて残業させる場合、
または、
Aの法定休日に勤務させる場合には、
労使が書面で協定(労使協定)を結び、労働基準監督署に届け出なければなりません。
労使協定は、労働基準法 第36条に基づくものなので、36協定(サブロク協定)と呼ばれています。
この36協定のポイントを会話形式で分かりやすく解説しましょう。
先生、こんにちは。
最近は暑い日が続きますね。
そうですね。
今年は猛暑が続きそうですね。
そういえば御社の業績の方はいかがでしょうか?
はい。
当社も昨年はかなり業績が落ち込みましたが、ここ数ヶ月は生産量が徐々に回復してきており、残業が多くなっています。
実は今日はその残業のことでご相談したいと考えていました。
どのようなことでしょうか?
この件は私から説明しましょう。
実は、当社の従業員の中に残業を拒否する者がおりまして対応に困っています。
会社としては、生産が間に合わないため、1日2時間程度残業をしてもらいたいと計画していますが、その社員は定時になると帰宅してしまうのです。
なるほど。
そもそも社員に残業をさせるには、
@就業規則等において残業の根拠となる条文が置かれていること、
A36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届出を行なうこと
の2つの要件を満たさなければなりません。
@については、御社の就業規則に
「会社は、業務の都合で従業員に所定労働時間外、深夜および休日に勤務させることがある。従業員は正当な理由なく所定労働時間外および休日の勤務を拒むことができない」
という規定がありますので、問題はありません。
そうですね。
それでAの36協定のことについて少し詳しく教えてもらえませんか?
分かりました。
そもそも労働基準法では、1日8時間、1週間40時間、そして週1日の休日(法定休日)という労働時間制度の原則が定められており、本来的にはその時間を超える労働は認められていません。
つまり原則として従業員に残業をさせることはできないという立場を取っているのです。
しかし、これには例外があります。
その例外が時間外・休日労働に関する協定、いわゆる36協定になるのですが、時間外労働を命じる時間数や休日労働の日数の枠について労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ることを要件に、この協定の範囲内において残業を命じることができるのです。
なるほど。
36協定とは、従業員に残業をさせても法違反にならないという位置づけのものなのですね。
そのとおりです。
それでは36協定の作成において注意すべきポイントを教えてください。
わかりました。
36協定を作成する際に注意しなければならないこととしては、大きく分けて以下の3点があります。
1. 時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめること
2. 臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行う場合には「特別条項付きの協定」が必要であること
3. 割増賃金の支払い義務があること
まず、1.については、厚生労働省より時間外労働の限度に関する基準(平成10年厚生労働省告示第154号)という通達が出されており、36協定の内容をこの基準に適合したものにする必要があります。
具体的には、時間外労働・休日労働は無制限に認められるものではなく、必要最小限にとどめるべきものであり、36協定により時間外労働の枠を設定する際には、原則として表1の限度時間の範囲に収まるように設定する必要があります。
[表1] 時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)
期間 限度時間 限度時間(1年単位の変形労働時間制の場合)
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヵ月 45時間 42時間
2ヵ月 81時間 75時間
3ヵ月 120時間 110時間
1年 360時間 320時間
当社は一般的な労働時間制度であるため、延長時間を1ヶ月45時間、1年間360時間以内で定めなければならないということですね。
しかし、先日お話しましたように、数名の者が月に60時間を超える時間外労働を行なわざるを得ないような場合は、どのようにしたらよいのでしょうか?
それが上記2.に関係することですね。
いまのお話のように業務の都合によって臨時的にどうしても表1の限度時間を超えて残業を行わなければならないということがあります。
そうした場合においては、特別条項付きの36協定を締結することによって、限度時間を超える時間外労働を命じることができます。
臨時的ということは、例えば納期のひっ迫や機械トラブルの対応のようなケースのことであり、慢性的に残業が多くなっているケースは該当しないということですか?
そのとおりです。
この特別条項は、限度時間を超えて残業を行わなければならない特別な事情に限定され、一時的または突発的に残業を行わせる必要のあるもので、全体として1年の半分を超えないものを指しています。
また、この協定を締結する際、限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3ヶ月以内の期間および1年間)ごとに割増賃金率を定めておく必要がありますので、この点にも注意が必要ですね。
会社としては1年の期間においてどのくらい残業をさせることがあり、また残業が多くなる特別の事情のある期間がどのくらいあるのか実態を確認した上で、この特別条項を結ぶ必要がありますね。
そうですね。
36協定に定めた範囲を超えて残業をさせているような場合は、36協定違反となりますので毎年同じ内容で届出を行うのではなく、実態を再確認することが望まれます。
そして、やはり会社としては労働時間管理が重要になってきますので、現場の管理職に日々の労働時間の管理をしっかり行うように指導し、残業を行う際には事前に残業申請書を提出させ、残業の必要性を確認した上で承認を行うという対応が求められます。
そして最後に3.の割増賃金の支払い義務について解説しておきましょう。
ご存知のように時間外労働・休日労働をさせた場合は、割増賃金の支払い(法定時間外労働の割増賃金率は25%以上、法定休日労働の割増賃金率は35%以上)が必要とされます。
ただし、今年の4月に改正労働基準法が施行され、大企業については1ヶ月60時間超の法定時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引上げられています(※中小企業については一定の猶予措置あり)。
当社は中小企業であるため一定期間の猶予がありますが、将来的に適用となると大きな影響がありますね。
割増賃金率の引上げによる影響もありますが、やはり過重労働も懸念されますので、会社としては業務内容の見直しや役割分担を調整するなどして、残業時間を減らす取組みが求められますね。
36協定の届出は事業所単位となっているため、本社のみ届出を行っている場合は法的に問題があり、支店や工場がある場合は本社、支店、工場といった単位でそれぞれの事業所で36協定を締結し届け出る必要があります。
ただし、場所的に独立していても、規模が小さい場合(例えば零細な店舗や出張所)で独自の労務管理が行われていない場合は、直近上位の中に含めて扱うことになります。
そのため複数の事業所がある場合は、それぞれの事業所で届出がなされているかを確認し、届出がされていない事業所については早めに届出を行うことが求められます。