リーマン・ショック以降、日本経済は厳しいデフレ不況が続いており、
とくに中小零細企業においては目を覆うような有様です。
御社においては不況から脱するべく、何らかの戦略・戦術を練って
おられることでしょう。
もしかすると、御社の業績を大きく向上させるためのヒントが
この 「アル・グッド物語」 から得られるかもしれません。
さて、世の中には積極的な人、ごく普通の人、消極的な人がいます。
消極的な心構えを持つ人は、なぜ、次々に失敗が起こるのか気づいていません。
悲観的な予想を持つことが 「不運」 を招いてしまう、ということに気づいていないのです。
ある人は、望むものを手にすることに失敗すると、その失敗を周囲の環境のせいにします。
仕事、会社、家庭、社会、または住んでいる地域のせいにするのです。
周囲の状況や環境には全く関係のない場合でもそうします。
その人は自分自身の中に、失敗の種、つまり、消極的な習慣のパターンを持っているわけです。
これらのことについて、考えさせられるフランク・ベトガー氏の話をご紹介します。
ある日、私が事務所を出ようとすると、一流の保険外務員であるアル・グッド氏が私を呼び止めて、こう話かけてきました。
アル・グッド氏
「景気はどうだい、フランク」
フランク・ベトガー氏
「お陰さまでどうにかやっています。 あなたの方はいかがですか。」
アル・グッド氏
「いやー、今年は私にとっては凶年らしい。」
「この不況は、一体いつまで続くのか私には分からないが、とにかく今年一杯は続くようだ。」
フランク・ベトガー氏
「一体どういうことなんです…不況とは。」 と、私は驚いて聞き返した。
アル・グッド氏
「現在、不況だということを知らないのか?」
フランク・ベトガー氏
「ええ、不況については何も知らないんです。」
アル・グッド氏
「君はどこにいたのかね。」
「君は何か読んだことはないかね。 我々はいま、不況の真っ只中にいるんだよ。」
フランク・ベトガー氏
「私はそのことは、何も知らないんです。」 と、率直に答えた。
アル・グッド氏は、それから不況について話し始めました。
彼はあらゆる経済事情について勉強していたので、私にそのときの経済状態や不況が深刻になった事情を詳しく説明してくれたのです。
彼の話を聞けば聞くほど、私がいかに馬鹿であったかに気づき、今までのように保険を勧誘して歩いているのが、道理に外れたことだと思えてきました。
その日、彼と別れて帰るとき、私はこのような不況が続く限り、人を生命保険に加入させることは不可能であることが分かりました。
次の週、何事が起こったと思いますか?
実際には何事も起こりませんでした。
しかし、私は爆弾でも落とされたような気がして、翌日から訪問することを中止してしまったのです。
3週間後には、私の売上げは低下するどころか、すっかりなくなりました。
まるっきり、根こそぎ無くなったのです。
そうなってしまったある日のこと、私はこう思いました。
「こんなふうになってしまったことは馬鹿馬鹿しいことだ。」
「アル・グッド氏が不況について教えてくれるまでは、私は順調に仕事をしていたのだ。」
「不況を理解したために、私は保険の契約が取れなくなった。」
「そして、何故そうなったかということについて、私の理解できる唯一の理由というのは、私が訪問を止めてしまったから、ということだけだ。」 と。
それに気づいてから、
まる1日を費やして、以前のように私のやっていた方法で仕事をする準備をしました。
やがて、私は再び仕事に立ち返り、その年の終りには国内第一位の成績を示したのです。
しかし、アル・グッド氏にとっては、その年は彼の生涯のうちで最も悪い年であったようです。
その次の年、1月に開かれた外務員会議においてアル・グッド氏は講演をしました。
彼の演題は「新年の概況」でした。
その話の内容は、新年に対する注意といわれるべき性質のものだったと記憶しています。
彼が話し終わったとき、活動的な青年が立ち上がって、「議長、提案があります。」 と発言しました。
「私はこの会議で、若い者たちが年配の人達に対して2ヵ月間の売上競争をしたらどうかという動議を提出します。」 と言ったので、その場の全員が笑い出しました。
それは実際奇妙な話だったのです。
年配者の方が若いの者たちよりも数の上で優勢であり、過去の成績によれば、プロ野球と草野球の試合のようなものであったのです。
しかし、年配組は冗談半分でこの挑戦に応じました。
この会議の後で、私は若い者たちを呼び集め、我々若い者だけの会議を持とうではないか、秘密の会議を、と提案しました。
そこで我々は、ある会合を持ったが、私はそこで数カ月前にアル・グッド氏が私に不況の説明をしたこと、それが私にもたらした結果、およびその後に起こったこと等について皆に話をしました。
皆はこの話を聞いて大笑いをして、不況のことなんか忘れてしまうことに賛成したのです。
つまり、不況についての話題を読んだり、聞いたりしないことにし、外に出かけてこれまで以上に訪問を行うことにしました。
2ヵ月間が経過した日、我々は年配組を2対1の成績で打ち負かしたのです。
この競争の終わった次の月曜日の会議で、私は若い者たちに話したと同様のアル・グッド物語を全部の外務員の前で話をしました。
人々は皆、この 「けしからん大きな狼」 のことを笑ったのでした。
それからというものは、私がいろいろな経営者を尋ねた場合、誰かが不景気とか不況の話をしようとすると、私は決まってアル・グッド物語の話をして、お互いに意味あり気に笑いました。
そして、それが縁となって、私はそういう人々と契約をまとめることが出来たのでした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。 社会保険労務士 近藤 昌浩