今の日本では、いわゆる成果主義による問題が第2ステージを迎えています。
多くの会社ではまだ気がついていないことです。
たとえば、最近の若い社員は「役職に就きたくない」という話をしています。
大手企業でも中堅企業でも中小企業でも大いに聞かれることです。
いわゆる成果主義が、日本の企業の組織風土を壊してしまったことが原因です。
成果主義を取り入れた会社で、中堅職以上の社員で役職に就いてる社員が20年前にどうだったかを振り返れば分かります。
成果主義を導入した企業で経営者は 「成果が高ければ高い処遇をします」 と発言をしてきました。
実際には成果だけではなく、どんな業務をしていたのか、どんな知識や技術を持っていたのか、どんな姿勢で働いていたのか、ということも考えて処遇を考えていたのに、です。
成果の高さだけで判断されると考えた社員は、高い成果を実現できるやり方は他の社員には教えなくなりました。
成果の上がらない社員からいくら聞かれても、教えません。
せいぜい 「運が良かった」 「たまたまだよ」 という言葉でお茶を濁してきたのです。
1か月間だけ成果が高かったなら、そんな言葉も信じられたでしょう。
しかしずっと続けて高い成果を上げているのにそう答えられたら、いくらなんでも優れたやり方を隠していることがわかります。
もともと日本には、分からないことでも教え合い、一緒に成長しようとする組織風土がありました。
しかし、間違った成果主義を取り入れたために、一気に 「教え合う」 ことがなくなってしまいました。
そして、優秀だと評価されるために高い成果を上げる方法を内緒にしてきた社員が組織内でステップアップした、つまり一般職層から中堅職層へ昇格したのです。
その社員は今まで優れたやり方を内緒にしてきたのです。
そんな社員が上司になったとき、周りの社員はなんと思ったでしょうか。
「こんな人間が上司になるようじゃ、この会社もおしまいだ」
それはそうです。
周りから見れば、自分がステップアップするために周りを蹴落としたも同然です。
困っている人を助けてくれないような、あんな人間にはなりたくない。
そう思っている社員が上司になったのです。
その上司の指導を受けないばかりか、反発するでしょう。
そんなときに、事情を知らない若い社員が入ってきたらどう思うでしょうか。
「この会社では上司は部下から尊敬されていない。権威もないし、何かというと非難されている。
上司というのはあんな状態になるものなんだなあ。この会社で頑張っていきたいけれど、できれば
役職には就きたくないなあ」
そう思うのは当然ではないでしょうか。
新入社員は、成長していって役職者になり、他の社員を指導することによって次の成長を遂げるという考え方を持つことができない組織に入ってしまったと感じるからです。
これが今の日本企業の実態です。
この実態のままであれば、日本の組織はすべて崩壊してしまいます。
組織運営ができないからです。
組織はもともと、上司の指示命令によって動きます。
そして上司の指導によって部下が育成されます。
これが根本から覆されてしまったのです。
それを早期に是正しなければなりません。
その方法が、「他の社員に教えることを高く評価する」 ということです。
高い成果を実現した重要業務、何をやっていたのかということをオープンにすることで高く評価されることになります。
成果が高いことが評価され、そして高い成果を上げるやり方が優れていることで評価され、そしてそれを他の社員に教えていたらもっとも高い評価になるということです。
今まで500人以上の経営者に質問して、すべて同じ答えだったものがあります。
「優秀な社員が、持っている優れたやり方を他の社員に教えたら、もっと高い評価をしますか?」
100パーセントの経営者が、「その通りだ」 と答えました。
しかし、社員はそのことを知らないのです。
仕方ありません。
成果主義と言われたら、高い成果を上げるやり方を教えることを経営者が高く評価するなんて、とても想像できません。
社員は高い成果を上げることでしか高い評価を得ることができないと思っていたのです。
過去20年の間に日本から失われたもの、そして原因のすべてが、これで説明できるといっても過言ではありません。
今、日本の組織は、人間関係が壊れていると言われています。
自分の評価のために困っている人を助けない。
そんな組織で人間関係が好ましくなるはずはありません。
間違った成果主義がつくりあげたのは、そんな組織でした。
今からでも変えることができます。
他の社員に教える社員を最も高く評価すると宣言してください。
教え合い、困っている人を助けるようになります。
困っている人は、教えてくれた人や指導してくれた人に感謝するでしょう。
そして感謝した相手が上司になるのです。
そんなことが当たり前な企業の人間関係が良くならないはずがありません。
実際に多くの企業の人間関係が良くなり、上司が尊敬の対象になっただけではなく、
教え合い――情報の共有化――が進んだことで全ての社員が優秀になり、
会社の業績向上に繋がっています。
これは決して1つの事例ではありません。
人事制度に取り組んで、教えることをもっとも高い評価としたすべての経営者が、同じように感じています。
そしてどの会社でも同じようにできることです。
他の社員に教えていたということを高く評価することを社員に伝えてください。
それによってあなたの会社は見違えるような組織風土になります。
そして組織風土が良くなることで、定着率は飛躍的にアップするでしょう。
※御社の組織風土を好ましい環境に変える支援を行っています。
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近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤昌浩