会社の社員数が増えれば管理者を登用しなければなりません。
組織原則の1つに統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)というものがあります。
1人の上司が管理できる範囲・人数は限られているということです。
一般的に8〜10人くらいが限界といわれています。
その規模になると昇進・昇格の必要性が生じてきます。
昇進とは、係長→課長→部長と役職が上がることです。
昇格とは、1等級→2等級→3等級と等級が上がっていくことを言います。
昇進・昇格制度が最初から文書として可視化されることはないので経営者の判断で決める
ことになります。
最初のうちは少人数であり、経営者も社員同士も認める昇進・昇格だから、あまり問題は生
じません。
ところが、昇進・昇格の人事が増えてくると、明らかに失敗だったという昇進・昇格の事例が出
てくるようになります。
これには1つの理由があります。
例えば昇進については、卒業方式を取っていることです。
〇卒業方式……現在の役職で充分その職責を果たしたら、上の役職へ任命する方式
〇入学方式……現在の役職のみならず、上の役職で充分その職責を果たせることを確認
してから任命する方式
多くの会社、特に中小企業の場合は卒業方式をとっているので、昇進した人がいる時には
その人を指導する体制がなければなりません。
最初から 「彼・彼女なら出来るだろう」 ということで任命するのですから当たり前です。
ところが、このフォローがないから “期待外れだな” ということになります。
特に最近は、その傾向が強くなってきていることは当然と言えます。
一昔前は、管理者になった者は 「オレの言うとおりにやれ」 と自分の過去の成功体験を基に
部下を指導することが出来ました。
部下もその通りやったら成果が出ました。
そのため部下は管理者に対し権威を感じることが出来たのです。
「この人の言うことなら間違いない」 と思っていたことが、今は通用しなくなりました。
管理者の言うとおりにやっても成功することは不可能に近いのです。
今までとは違う管理者像が明らかにならなければなりません。
特にこの点は重要になってきました。
この点を含めて、期待はずれと思ってしまう点は限定列挙できます。
1)部下を指導教育できるか
社員の問題点を見つけ出し、その解決策を講じて、改善させることが出来るか。
2)リーダーシップがあるか
組織の状況に合わせて組織全体をまとめ、組織目標へ向かわせることが出来るか。
3)モチベーションを高められるか
組織における2:6:2の法則で言えば、成果の上がっていない2割の社員のやる気を
起こさせることが出来るか
4)数値責任を果たせるか
管理者としての業務責任、すなわち数値責任を果たせることが出来るか。
(間違っても数値目標達成の難しさを、環境のせいにしてはいけない。)
5)改善業務を実行しているか(これが重要)
この時代の管理者の優先業務は 「変える」 ことである。
決して今までのやることを順守することではありません。
今までのやり方のままであれば、同じ結果以下しか成果は出ないでしょう。
今までの全てのやり方を見直し、成果の出るやり方へ 「チェンジ」 させなければならないのです。
過去のやり方に固執してはいけません。
今までのやり方を変えなければならないのです。
「管理業務は改善業務」 と言って良いくらいです。
現在、どんな業務の改善に取り組んでいるのか。
このように管理者に期待する事柄について、経営者は昇進させるときにチェックしなければな
りません。
実際的には、役職に付いてからの確認なので、「出来るだろう」 というレベルの確認になります。
そのため、役職への任命時には、その本人にこの点を説明し、「まだ不充分な点があるので、
その点は私が今後も指導する」 と付け加えておかねばなりません。
ここまで出来ていれば、本人にその役職が適任でないときでも感情的にならず、役職を降りて
もらうことが可能になります。
そもそも管理者への登用は、100%成功、つまり、必ずしもその社員の適性職務となることは
ないことを最初から心得ておくべきです。
その成功率を高めるためには、やはり昇進・昇格基準 (昇進・昇格してもらうための要件) を決め、
社内にオープンにすることです。
昇進・昇格基準は難しいという誤解もあります。
だから例えば、係長という役職に付いてもらうには 「次の要件をクリアすることが必要です」 と
簡単にまとめることです。
簡単にすべき理由は、その要件を見てチャレンジ目標にしてもらう訳ですから難しくしてはいけ
ないのです。
簡単が一番です。
そして、これがオープンになることにより、より高いステージでの仕事に挑戦しようという意欲の
ある社員にとっては、具体的な目標が出来たことになるのです。
目標が明らかであれば、社員の成長のスピードも早くなることは間違いありません。
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近藤経営労務事務所
社会保険労務士 近藤昌浩