会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2023/05/11
政府から公表されたこども・子育て政策の強化の試案と予想される企業への影響

 2023年4月1日にこども家庭庁が創設され、その前日にはこども政策担当大臣から「こども・子育て政策の強化について(試案)〜次元の異なる少子化対策の実現に向けて〜」が公表された。そこで、社労士はこの内容を顧客に説明することにした。

 今日は、2023年3月31日に政府から公表された「こども・子育て政策の強化について(試案)〜次元の異なる少子化対策の実現に向けて〜」の中から、今後、企業の実務に影響が出る可能性が高い内容についてお伝えしたいと思います。

 マスコミの報道を見ましたが、今後いろいろな動きがありそうですね。

 はい。ただ、現時点では試案であり財源も決まっていませんので、あくまでも今後の方向性のような内容になります。さて、様々な内容のうち、企業の実務に影響が大きいと予想されるものが3点あります。(1)男性育休の取得促進、(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進、(3)多様な働き方と子育ての両立支援、これらの内容は押さえておいた方がよさそうです。
 まず、(1)男性育休の取得促進では、「男性育休は当たり前」になる社会の実現に向けて、官民一体となって取り組むとしています。制度面と給付面からの内容が検討されていますが、まず制度面についてです。これまで男性の育休取得率を2025年までに30%という政府目標が掲げられていましたが、これを50%に引上げ、さらに2030年の目標を85%としています。

 大幅な引き上げですね。確か、直近の取得率は約14%くらいでしたね。

 そうですね。これに関連して、現在、従業員101人以上の企業は、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画の策定・届出等が義務付けられていますが、この事業主行動計画に以下のような内容を義務付けるとしています。
 ・男性の育休取得を含めた育児参加や育休からの円滑な職場復帰支援
 ・育児のための時間帯や勤務地への配慮等に関する目標・行動を義務付ける
 また、2023年4月より従業員数1,000人を超える企業に義務付けられた、年1回の男性労働者の育児休業等の取得状況の公表について、対象企業の拡充も検討するようです。

 なるほど。公表対象になって集計するとなるとたいへんそうですね。

 確かにそれはありますね。続いて、給付面についてお話しましょう。2022年10月より出生時育児休業(産後パパ育休)がスタートしましたが、出生後一定期間内において両親ともに育児休業を取得することを促進するため、育児休業給付の給付率を現行の67%(手取りで 80%相当)から、80%程度(手取りで 100%相当)へと引き上げることが検討されています。

 女性の育児休業給付については、どのようになるのでしょうか?

 女性についても、28 日間(産後パパ育休期間と同じ期間)を限度に給付率を引き上げることが検討されています。

 実際に決定すると、育児休業の期間によって、給付率が下がってくるイメージになりそうですね。

 はい、80%→67%→50%となる可能性もありますね。従業員への説明も複雑になりそうです。
 次に、(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進では、育児期を通じて多様な働き方を組み合わせることで、男女で育児・家事を分担しつつ、育児期の男女がともに希望に応じてキャリア形成との両立を可能とする仕組みを構築していくとしています
 現在は、育児・介護休業法上で義務となっている3歳未満のこどもを養育する従業員が利用できる育児短時間勤務について、こどもが3歳以降小学校就学前までの場合において、短時間勤務、テレワーク、出社・退社時刻の調整、休暇など柔軟な働き方を職場に導入するための制度を検討することにしていますね。

 なるほど。当社でも育児と仕事の両立を支援するために、対応を検討しようとしていたところでしたが、国も同じ方向で検討しているということですね。

 そうですね。この短時間勤務に関して、男女ともに短時間勤務をしても手取りが変わることなく育児・家事を分担できるよう、こどもが2歳未満の期間に、短時間勤務を選択した場合の給付を創設するとしています。
 最後に、(3)多様な働き方と子育ての両立支援では、雇用保険が適用されない週所定労働時間 20 時間未満の労働者についても失業手当や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向けた検討を進めるようです。

 これは影響が大きいですね。今後の動きに注目ですね。

 今後、この試案をベースに議論、検討を進め、2023年6月の「骨太の方針2023」までに大枠を提示するとしています。また情報が出てきましたら、お知らせします。

>>次回に続く



 上記でとり上げた(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進については、こどもが病気の際などに休みにくい等の問題を踏まえ、病児保育の拡充とあわせて、こどもが就学前の場合に年5日間取得が認められる「子の看護休暇」について、こどもの世話を適切に行えるようにする観点から、対象となるこどもの年齢や休暇取得事由の範囲などについて検討される予定となっています。

■参考リンク
こども家庭庁「こども・子育て政策の強化について(試案)- 次元の異なる少子化対策の実現に向けて -

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 

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