会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2025/6/12
通勤手当の支給額や労災保険の適用に関する考え方

今月入社した従業員からマイカー通勤の届出があった。通勤手当の支給額は、この届出に基づいて計算しているが、会社が計算して出した距離数と、届出に記載された距離数とが大きく異なっていた。実務上、通勤手当をどのように計算するのがよいのか、社労士に相談することにした。

 今日は、通勤手当の計算方法について相談させてください。今月、入社した従業員からマイカー通勤の届出がありました。確認のため、私が従業員の自宅住所から会社までを検索して距離数を出したのですが、本人が届出に記載してきた距離数と数キロの差がありました。

 なるほど。検索して出した距離数と、本人が届出をした距離数が異なることは、実際ありますね。

 本人に確認したところ、一番近い道は、朝はかなり渋滞するため、少し遠回りをして空いている道を通ってくるそうで、実際に利用する経路で届出をしたとの話でした。この場合、本人が申し出た距離数で計算して、通勤手当を支給する必要があるのでしょうか?

 結論から言うと、本人が届け出た距離数に基づいて支給する必要はありません。通勤手当は、法律に基づいて支給するものではなく、自社の賃金規程などで定めるルールに基づき、支給するものだからです。よって、今回の件であれば、マイカー通勤の際の通勤手当の対象となる経路の考え方を明確にしておくことが必要です。

 なるほど。あくまでも自社の制度としてルールを定めておけばよく、実際に利用する経路と、通勤手当の支給ルールが異なってもよいということですね。

 その通りです。今回はマイカー通勤のご相談でしたが、公共交通機関による通勤の場合も同じで、従業員が何らかの事情で会社が想定している経路と異なる経路で通勤していたとしても、会社がルールを定めて合理的・経済的な経路に基づいて通勤手当を支給することになっていれば、そのルールに従って支給すればよいということになります。

 通勤途中にケガをしたような場合、通勤災害として労災保険が適用になると思いますが、通勤手当を支給するための経路と実際に通勤していたときの経路が異なっていたとしても、通勤災害として認められるのでしょうか?

 はい。通勤災害については、合理的な経路および方法であれば、通勤手当を支給する経路と異なっていても、通勤災害として認められます。会社としては、通勤手当を支給するための経路と、実際に利用する経路の2つを会社に届け出ておいてもらうと、万が一事故が発生したときの証明もスムーズになりますね。

 なるほど。このようなケースは今後も出てくると思いますので、通勤手当に係る届出の様式を変更してみようと思います。

>>次回に続く



 ここで通勤災害に遭い、休業した場合の3日間(待期期間)の取り扱いについて補足しておきましょう。
 まず、業務災害による休業補償は、労働基準法第76条で事業主に義務づけられています。労災保険法は、その休業補償をする形でカバーされていますが、休業4日目からの支給となっています。そのため、休業から3日間の待期期間については、労働基準法に基づいて会社が休業補償を行う必要があり、4日目以降は労災保険法からの給付を受けられることから、労働基準法第76条の義務が免除される形になります。
 通勤災害については、この労働基準法上における補償規定はないため、3日間の待期期間について、会社は休業補償の義務はありません。3日間の待期期間の取り扱いが異なることを理解しておきましょう。

■参考リンク
東京労働局「通勤災害について

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。



 

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